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【生産者・流通者インタビューVol.2】約40年続けてきた、きのこの菌床栽培を次の世代へ

今から40年ほど前、県産きのこの出荷量がまだまだ少ない頃に、菌床を使ったきのこ栽培を始めたのが、八重瀬町にある南ヒラタケ生産組合です。長年きのこ栽培をしてきた本部強さんと、そのバトンを受け継ぐ息子の圭志さんにお話をうかがいました。

 

強さんが栽培を始めた40年ほど前は、本島北部で原木を使ったしいたけの栽培がわずかに行われていたくらいで、きのこ栽培はメジャーなものではなかったそうです。きのこの栽培に関する情報がほぼなかったため、台湾のきのこ生産者とつながりのある知り合いを頼って現地を訪れ栽培のノウハウを学び、アワビタケやキクラゲの栽培を始めたといいます。当時、選んだきのこ菌によっては菌床と合わずにきのこが出てこないことがあったり、その年の気候によって収穫量が不安定になるなど、試練がある度に試行錯誤を重ねながらこれまで続けてきました。

現在栽培しているのは、しいたけとキクラゲ。一般的には、湿度や温度の管理ができる屋内施設で栽培しますが、強さんたちは今も昔と変わらず、半屋外であるビニールハウスで栽培しています。その中でも、お客様から人気の高いしいたけが、どのように作られているのか、息子の圭志さんに教えてもらいました。

 

しいたけが市場に出回るまでには大きく4つの工程があります。まずは、しいたけが育つ土壌である「培地」作り。麦ぬかとおがくずを混ぜた培地を袋につめて殺菌し、無菌になった菌床にきのこの種菌を植え付けます。それから菌を増殖させる「培養」を行うために、温度と湿度が保たれた培養室へ移動。菌が増えたら、「発生」工程へ。培地作りから90日ほど経つと、ビニールハウスの中でしいたけが成長し、収穫できるようになります。ちなみに、収穫作業後に再び培地を水に浸すと、1週間ほどで新たなしいたけが生えてくるとのこと。この再収穫は3回まで可能だといいます。

よりこだわりのあるきのこ栽培がしたいと、15年ほど前からはきのこの種類に合わせた菌床作りに新たに挑戦。きのこの生育の要となる菌床作りは、高度な技術が必要なため県内で生産しているところは数カ所しかありません。それでも作ることを決めたのは、強さんのきのこ栽培への情熱と、おいしい県産きのこを消費者に届けたいと思う気持ちがあったから。苦労しながら成功させた菌床の出来は上々で、10年ほど前からは菌床自体の販売も始めました。お客さまからは獲れたてのしいたけが自宅で味わえ、さらに収穫体験もできるとあって好評とのこと。

こうして徐々にファンを増やしている南ヒラタケ生産組合ですが、「もともとは私たちできのこ作りを終わるつもりだった」と話すのは、強さんの傍で共にきのこ栽培をしてきた妻の田鶴子さん。きのこ栽培の酸いも甘いも知っているからこそ、息子に継がせることは考えていなかったといいます。しかし、周囲から「これからもおいしいきのこを作り続けて欲しい」「40年近く培ってきたノウハウがここで途絶えるのはもったいない」などの声が聞かれるようになり、息子の圭志さんにきのこ栽培について教え始めました。

 

そんな圭志さんが今挑戦しているのは、父が作っていたアワビタケをもう一度栽培すること。「これまでの培地を入れる容器と違っていることや、アワビタケの品種によっても成長のスピードや収穫量が変わってくるので、慎重に試しながら進めていきたいと思います」。併せて、湿度や温度管理ができる設備を導入して収穫量を上げていきたいとも考えているとのこと。

 

「色々とプレッシャーを感じることもあります。でも父のようにどこに出してもおかしくない、おいしいきのこを作っていきたいと考えています」。圭志さんの挑戦は始まったばかりです。

 

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